日本は32年連続「世界最大の対外純資産国」を維持。海外から「戻ってこない円」の増加が気になるが…https://t.co/K9vI3toxeU
— 黒井五郎(News U.S.) (@goro_newsus) May 30, 2023

日本は32年連続で「世界最大の対外純資産国」の地位を保持していますが、海外から「戻ってこない円」の増加が懸念されています。
財務省が公表した統計によれば、日本の企業や個人、政府が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産残高は、前年比7204億円増の418兆6285億円となり、5年連続で増加しました。この結果、日本は32年連続で「世界最大の対外純資産国」という地位を維持しています。
しかし、この対外純資産の増加は、国内の投資機会の乏しさを示す証拠でもあり、必ずしもポジティブな話とは言えません。具体的には、日本企業の危機感も透けて見えてきています。
対外証券投資残高の内訳を見ると、外国への証券投資残高は48.6兆円減少しており、この減少は数量要因と価格要因に分解されます。数量要因では22.8兆円の減少があり、証券資産が売却されたことを意味します。価格要因では、為替相場の変動により46.9兆円増加しましたが、資産価格の変動により72.7兆円減少しました。
この変動の背景には、欧米の中央銀行による利上げや株式市場・債券市場の大幅な下落があります。これが対外証券投資残高の減少として表れたものです。ただし、円安の影響により株価や債券価格の下落の6割以上は相殺され、対外証券投資残高の減少は一定程度に抑えられています。
今後も円安が進んでも、対外資産残高は増加することが予想されます。ただし、これは国内における投資機会の乏しさの裏返しでもあり、必ずしもポジティブな状況とは言えません。
日本は32年連続で世界最大の対外純資産国
特に注目すべきは、対外直接投資とその対外純資産残高に占める比率の高まりです。2022年末時点での対外純資産残高を保有資産別に見ると、直接投資が最大項目であり、54.6%を占めることがわかりました。一方、証券投資は17.5%となり、低水準となっています。この結果、直接投資と証券投資の差は37.1%ポイントというかなりの差になっています。
このような変化から、円買い需要の剥落が懸念されています。対外証券投資残高はリスク回避ムードが高まった際に円買いが期待されますが、対外直接投資残高では同様の動きは見られません。投資家が外国証券を売却して円に換えることは容易に想像できますが、事業法人が海外で買収した企業を手放すには相応の議論と時間が必要です。そのため、円の売却は簡単ではありません。
つまり、日本の「世界最大の対外純資産国」のステータスは維持されていますが、その内訳において直接投資が証券投資を大きく上回る状況では、「売られたまま戻ってこない円」の割合が高まっていると言えます。
また、直接投資の収益の内訳に注目すると、再投資収益の割合が増えていることが分かります。直接投資の収益率は上昇基調であり、日本よりも成長率の高い諸外国が存在しています。このため、証券投資よりも直接投資が選好される傾向は今後も続くでしょう。その場合、収益を日本に戻すよりも海外で期待される収益に再投資する方が効果的であり、円に戻すコストが無駄になる可能性があります。
以上のような動向から、対外純資産は増加しているものの、日本に還流する円の割合が低下しており、円安が進みやすい状況が生まれていると言えます。現在の対ドル円相場も140円台まで円安が進んでいます(2022年秋以来の水準)。
コメント欄の意見:
yasさん
通年を通して慢性的な円安は現実的ではなく、アメリカや日本の金利動向が影響を与えると指摘しています。shmさん
日本に投資しても儲からないため、海外で期待収益の高い投資機会を模索するのは当然だと述べています。wooさん
経常収支黒字は円高ではなく円安になりやすい構造になっており、円安政策の中長期的な影響に懸念を示しています。teketeke*****さん
円は世界に流動資金を供給しており、その役割が重要だと主張しています。市場原理によって是正されるべきだと述べています。iaeさん
円安は財界でも歓迎される傾向があるが、対外純資産の増加には注意が必要であり、国内の生産性向上を促進するための投資環境整備が重要だと指摘しています。rhsさん
円は噴火や地震などのリスクに備えて海外に資産を置くべきだと主張しています。wepさん
日本は外資投資の機会が多いにも関わらず、尻込みしているため外資企業が回収できていないと指摘しています。sugさん
政府の財政政策が国内需要の喚起を行っていないため、投資機会が乏しいと指摘しています。誤った財政政策が需要の縮小やデフレ経済をもたらしていると述べています。



